債務整理

自己破産をすることによる家族への影響

自己破産をすることによる家族への影響

借金を返済できなくなって自己破産をしようと思っても、「家族に迷惑がかかりそうだから…」とためらって、なかなか前に踏み出せない人がいます。
そういった悩みを抱えている人のために、ここでは自己破産に伴う家族への影響について解説していきます。

実際のところ、家族への影響は世間一般で考えられているよりも意外に少ないのが現状なのです。

どのような影響があって、どのような心配が要らないのか、本記事を通じてぜひ疑問を解決してください。

1.そもそも自己破産とは

自己破産は、自分の財産を処分してお金に換えて債権者に弁済したうえで、それでも残った借金については返済を免除してもらえるという制度です。

これによって、債権者はある程度の弁済を受けられますし、債務者の方は借金が無くなるので、生活の再建や社会復帰が望めるというメリットを受けられます。

しかし、自己破産をした人の財産をすべて処分してしまうと生活の再建どころではなくなってしまうので、ある程度以上の財産のみが処分の対象となります。
例えば、99万円までの現金は自己破産をしても手元に残せますし、金融機関の口座にある預貯金は20万円までなら処分されません。

「自己破産=ほとんどの財産を失って一文無しになる」というイメージを持っている人がいるかもしれませんが、実際には当面の生活に困らない程度の財産を持ったまま借金をゼロにできるので、あまり大きな不安を抱く必要はありません。

とは言え、自己破産による悪影響がゼロというわけではありません。次の項目からは、自己破産が家族に及ぼす影響と、特に影響のない事柄について紹介していきます。

2.自己破産によって家族に発生する影響

まずは、自己破産が家族生活にどのような影響を及ぼすのかを述べていきます。

(1) 財産の処分

自己破産すると、一定以上の財産を処分しなければなりません。

処分するような財産がなければ問題ないのですが、土地や家屋などの不動産は処分しなければならないことが多いです。
持ち家がある場合は引っ越しを余儀なくされるので、家族生活に大きな影響が発生してしまいます。

自動車については、ローンの支払いが終わっていても、評価額が20万円を超える場合には原則処分の対象となります。
自動車の有無は、場合によって家族生活に大きな影響がありますが、自動車以外の移動手段がなかったり、通院に必要だったりするなど、生活する上で自動車が不可欠な場合は処分されない可能性があります。

自動車を手元に残せるかどうかは個々のケースによって判断が異なるので、不安がある場合は自己破産に詳しい弁護士に相談し、質問してみることをおすすめします。

(2) 一部の仕事ができなくなる(資格制限)

自己破産をすると、一定の期間は一時的に特定の仕事に就くことができなくなります。
期間は破産手続きの開始決定がされてから免責許可決定が下りるまでの、概ね3ヶ月から半年程度です。

制限される職業は以下の通りです。

一般的な職業

警備員、生命保険募集人、旅行業務取扱の登録者や管理者、建築業を営む者、貸金業者の登録者、質屋、割賦購入斡旋業者の役員、労働者派遣事業者の役員、証券外務員、廃棄物処理業者、風俗営業の営業所管理者、下水道処理施設の維持管理業者、競馬の調教師や騎手

士業

弁護士、司法書士、公認会計士、税理士、行政書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、弁理士、通関士、公証人

その他、一部組織の役員や関係者

日本銀行の役員、信用金庫の役員、人事院の人事官、都道府県公安委員会の委員、公正取引委員会の委員、教育委員会の委員、商工会議所の役員

職業が制限されると収入がなくなってしまうので、家族への悪影響は避けられません。

(3) 各種ローンの審査に落ちる

自己破産をすると、その人の名義でローンを組むことはできなくなります。

自己破産に限らず、債務整理を行うと、いわゆる「ブラックリスト状態」となり、「破産者=返済能力に問題がある人」と認識されてしまうので、破産してから5~10年程度はどの金融機関もお金を貸してくれなくなるのです。

このため、破産者の名義では住宅ローンも自動車ローンも組めなくなり、家族生活に悪影響を及ぼすおそれがあります。

しかし、配偶者などの名義でローンを組むことは可能です。

(4) 連帯保証人になれない

破産をすると、保証人や連帯保証人にもなれません。配偶者の名義でローンを組むことはできても、保証人や連帯保証人を別途確保しなければならなくなります。

また、子どもが奨学金を借りる際には、子ども名義で契約を行いますが、その保証人にもなれません。やはり誰か他の人に保証人になってもらう必要が生じます。

(5) 家族が保証人の場合、その家族に借金の請求がいく

自己破産によって破産申立人の借金がゼロになったとしても、連帯保証人や保証人の返済義務は残り続けます

そのため、家族に借金の連帯保証人や保証人になってもらっている場合は、その家族が借金を返済しなければならなくなってしまうのです。

家族に迷惑がかかることになるので、自己破産を検討するときは事前に家族と相談しておくことを強くおすすめします。

3.自己破産しても影響が発生しないもの

ここまで、自己破産が家族に及ぼす悪影響を紹介してきました。
ここからは、逆に影響がない部分について紹介していきます。

(1) 家族名義の財産は処分の対象外

自己破産は個人で行うものであって、世帯で行うものではありません。

そのため、破産者本人の財産は処分の対象になっても、家族名義の財産には影響がないのです。

(2) 家族の名義ならローンを組める

先述の通り、自己破産の対象はあくまで申立人個人なので、自己破産をしていない家族の名義であればローンを組むことができます。

破産した人は保証人や連帯保証人になれないので、ローンの保証人などは別途探す必要がありますが、破産者の家族であっても収入などの要件を満たしていればローンの審査には通るので安心してください。

(3) 賃貸物件には継続して住める

かつては破産したことを理由としてマンションやアパートの賃貸契約を解除されてしまうことがありましたが、現在ではそのようなことはありません。

家賃を長期間滞納するなどしない限り、賃貸物件には家族で問題なく住み続けることができます。

(4) 破産しても解雇はされない

破産すると一定の職業に就くことができなくなりますが、破産を理由に解雇することは法律上認められていません。
お金を扱う経理などの仕事から別の部門に異動させられる可能性はありますが、解雇されることはありません

解雇されることがなければ、破産前と同じように収入を得ることができます。

万が一不当に解雇された場合は、弁護士に相談して法律的に解決することをおすすめします。

【離婚について】
自己破産だけを理由として、自己破産をしていない人が破産した人へ一方的に離婚を請求することはできません
自己破産は個人の経済的な再生や自立を促すものであり、その個人が持つ正当な権利の1つです。正当な権利を行使しただけなので、自己破産は離婚のための正当な事由とはみなされないのです。
(ただし、双方の合意による協議離婚は可能となっています)

4.自己破産前は家族と弁護士に相談を

このように、自己破産をしても家族にかかる迷惑は限られています。しかし、限定的とは言え、何らかの迷惑がかかる可能性があることは否定できません。
自己破産をする前は、家族に相談して、今後起こりうるリスクについて包み隠さず話した方がいいでしょう。

事前に弁護士に相談しておけば、家族への説明についても、弁護士がアドバイスしてくれます。
法律の専門家である弁護士の言葉があれば、ご自身や家族の不安も少なくなるはずです。もしかしたら、自己破産以外の選択を取ることもできるかもしれません。

自己破産をはじめとする債務整理を検討する際は、必ず弁護士に相談するようにしてください。

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