窃盗の慰謝料の相場はどのくらい?
「窃盗罪」は、テレビやネットニュースで目にすることが多く、皆さんにとって身近と言える犯罪でしょう。
中には、つい出来心で窃盗をしてしまい、この記事をご覧になっている方もいるかもしれません。
窃盗罪を犯してしまった場合、被害者から慰謝料を請求される場合もあります。それでは、この慰謝料はどのくらいかかるのでしょうか?盗んだ物の代金だけでは済まないのでしょうか?
ここでは、窃盗の慰謝料相場について解説します。
このコラムの目次
1.窃盗罪とは
窃盗罪(刑法235条)は、他人の財物を窃取した場合に成立します。つまり、他人の物を盗むことです。
窃盗の類型は様々です。例えば、コンビニで万引きすること、道端の自転車を盗むこと、電車でスリを行うこと、空き巣を行うなどがありますが、これらは全て窃盗罪で処罰されます。
窃盗罪を犯した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
2.慰謝料とは
慰謝料とは、精神的損害に対する補償を言います。犯罪被害を受けた方は、多かれ少なかれ精神的なショックを受けます。これに対する補償を慰謝料と言うのです。
(1) 慰謝料と損害賠償金の違い
慰謝料と聞くと、損害賠償金と何が違うの?と考える方がいると思います。
損害賠償金とは、被害者の「損害」を「賠償」つまり「補てん」する金銭のことです。
精神的な損害を補てんする慰謝料は損害賠償金の一種類ですし、財産的な損害を補てんする金銭も損害賠償金の一種類です。
なお、財産的損害とは、経済的な不利益を言います。
例えば、コンビニで万引きした商品の代金や、電車ですった財布の代金と財布の中身の金額や、窃盗の際に壊した機材等(例えば、空き巣が窓ガラスを割って侵入したケースの窓ガラス修繕費)などがこれに当たります。
一部では、「損害賠償金とは慰謝料のことを言う」と記載しているサイトがありますが、これには少し説明が必要です。
損害賠償金とは、財産的損害に対する補償と慰謝料ですが、犯罪によっては財産的損害が発生しないものがあります。例えば、痴漢事件の場合は、財産的損害が無いのが通常です。この場合、被害者に支払うのは慰謝料のみになります。
このように、損害賠償金=慰謝料となる場合があるだけで、全ての犯罪で損害賠償金=慰謝料となるわけではないのです。
(2) 窃盗の慰謝料相場
窃盗罪に限らず、慰謝料を算定する客観的な基準は存在しません(例外は交通事故だけです)。
また、スーパー、コンビニ、書店等での万引き、電車内でのスリ、駅などでの置き引き、駐車中の自動車内の金品を狙う車上荒し、高級自動車そのものを盗む自動車窃盗、休日の事務所に侵入する事務所荒し、民家に侵入する空き巣狙い……このように、ひと口に窃盗と言っても、様々な犯行態様が含まれるので、「窃盗の慰謝料相場」を示すことは困難です。
窃盗の慰謝料は10~50万円と言われることがありますが、実際は、具体的な事例毎に大きく異なります。
例えば、万引きの場合、大手スーパーやコンビニなどは、財産的損害(商品の代金)としての賠償金は受け取るものの、慰謝料の受け取りや示談には一切応じないという方針の会社も珍しくありません。
個人商店主では、これと同様の対応をとる被害者もいれば、商品代金の支払いだけで示談に応じてくれるケース、慰謝料も請求するケースと様々です。
また、以下の場合には、慰謝料が高額になる場合があるでしょう。
- 盗品が高額(例えば、高級自動車、美術品、宝石、貴金属類)
- 被害者の精神的ショックが強い(例えば、住居に侵入しての窃盗)
- 被害者の加害者に対する処罰感情が強い(例えば、恒常的に万引き被害に遭っている商店主)
- 加害者の社会的地位が高い・経済力がある(例えば、警官や教師による万引き)
3.もし窃盗をしてしまったら
窃盗は立派な犯罪です。そのため、万引き・スリ等を行うと、捜査機関に逮捕されて検察官に起訴される可能性があります。
起訴されると、裁判で有罪判決となって罰金刑や懲役刑に科される可能性が高まります。そうすると、日常生活に大きな支障をきたすことになります。
(1) 起訴を回避するには
そこで、被害者と示談をして、検察官に起訴を控えてもらうことが重要になります。被害者と示談をすることにより、不起訴処分の可能性が高まります。
示談においては、加害者が示談金(損害賠償金)を支払う旨を示談書に盛り込むのが通常です。加害者が示談金を支払うかわりに、被害者は犯罪行為を許す意思を表明してもらいます。
これにより被害が回復され、処罰感情が収まったと検察官に評価されるので、起訴されなくなる可能性が高まるのです。
(2) 弁護士に示談の相談をすべき理由
先述のように、示談においては、被害者に示談金を支払うことになります。しかし、自ら示談を行う場合、適切な示談金の額が分からず、被害者に過度な示談金を支払ってしまうといった事態になりかねません。
他方、刑事事件に詳しい弁護士なら、事案ごとに適切な示談金の額を導き出せるので、不適切な示談金で示談を成立させてしまうといった事にはなりません。
その他にも、弁護士に示談を依頼するべき理由として以下のものが挙げられます。
- 被害者は、加害者に対して不信感をもっており信用してくれないのが通常です。弁護士を代理人とすることで、こちら側を信用してくれ、スムーズに示談交渉が進みます。
- 当事者同士だと、示談交渉が紛糾する場合がありますが、弁護士を挟むことで、冷静な交渉が可能になります。
- 交渉中であっても、示談交渉の進行具合を検察官に伝える等を行い、不起訴処分にしてもらえるよう検察官に働きかけてくれます。
- 万が一、被害者が示談交渉に応じてくれない場合、贖罪寄付(一定金額を寄付して犯罪被害者のために役立てる等をすること)を行う場合があります。これを行うことで、検察官に、被疑者に有利な事情として考慮してもらうことが可能になるのですが、この手続等を弁護士が行ってくれます。
4.窃盗事件の示談は弁護士へ相談を
適切な金額で示談を成功させるには、刑事事件に詳しい弁護士の助けが必要です。窃盗罪を犯してしまった方は、どうか早急に弁護士までご相談ください。
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