将来利息をカット!任意整理手続きの流れ
あなたが多額の借金で困っている場合、何もせずに放っておくと利息がどんどん膨らみ、借金返済のための借金で首が回らなくなってしまいます。
借金問題は、早いうちに何らかの方法で解決する必要があるのです。その解決のための手段が「債務整理」です。
ここでは、数ある債務整理の中から、毎月の返済額を減らし、生活を立て直すことができる「任意整理」について、詳しく説明していきます。
このコラムの目次
1.任意整理とは?
任意整理とは、債権者と直接交渉して、債務者が将来支払う利息や遅延損害金などをカットしてもらい、残った借金については数年~5年程度かけて毎月少しずつ返済していくという債務整理方法です。
借金を放置していると、毎月の分割払いを拒否されて借金の一括返済を求められることがあります。
しかし、任意整理をすると、個々の事情に合わせた形で毎月分割返済してくことになるので、一括返済をしなくて済むようになります。また,毎月の支払額を今より減らすことができる場合もあります。
任意整理は日本で最も多く行われているタイプの債務整理であり、日々たくさんの人が任意整理をすることで生活を再建しています。
借金を放置した結果、利息や遅延損害金が膨らんでしまって、取り返しがつかなくなるケースが散見されます。
できるだけ早く任意整理を行うことで、傷口を広げずに借金苦からの解放が可能となります。
(1) 任意整理と他の債務整理との違い
簡単に、任意整理と自己破産、そして個人再生との違いを紹介します。
自己破産
自己破産は、裁判所に申立てをして、借金をゼロにしてもらう債務整理です。
借金の減額効果は非常に大きいのですが、一定以上の財産がある場合には,それらを処分してお金に換え、債権者への弁済に充てなければいけません。
また、一定の免責不許可事由があると、自己破産を申し立てても免責(借金の免除)がされない可能性があります。
任意整理のように手続をする債権者を選ぶことはできず、すべての債権者を手続に含める必要があります。
メリットが大きい半面、デメリットも少なくない債務整理と言えます。
個人再生
個人再生も、裁判所を通じて行う債務整理です。借金を5分の1程度に減額し、残った借金を3年程度かけて毎月分割で返済していきます。
借金の減額効果は自己破産に劣りますが、任意整理よりも減額幅が大きいタイプの債務整理です。
個人再生も,すべての債権者を手続に含める必要があり,任意整理のように手続をする債権者を選ぶことはできません。
なお、個人再生の手続きは非常に複雑なため、一般人が自力で行うのはほぼ不可能とも言われています。
(2) 債権者は任意整理の交渉に応じるのか
一般人が貸金業者やクレジットカード会社、銀行などの金融機関に直接交渉をしても、相手にしてもらえないことがほとんどです。
しかし、弁護士が介入することで、多くの債権者が交渉に応じてくれるようになり、任意整理にも粛々と応じてくれます。
債権者としては、自己破産や個人再生をされると、債権の回収額が大幅に減るか、または全然回収できない可能性がでてしまいます。
少しでも多くの債権を回収するために、任意整理に応じてくれる債権者は少なくありません。
借金で生活が立ち行かなくなったら、できるだけ早く弁護士に面会して、任意整理について相談してみてください。
2.任意整理の流れ
それでは、任意整理の具体的な流れを見ていきましょう。
(1) 弁護士への相談と依頼
弁護士に借金のことを相談し、任意整理を依頼します。
(2) 弁護士から債権者に連絡
弁護士が受任したことを、文書で各債権者に通知します(受任通知)。
これによって、以後の交渉の窓口が全て弁護士となるため、債務者本人には督促が来なくなります。
(3) 債権額の確定
もし利息を払いすぎている可能性がある場合は、弁護士が引き直し計算というものを行って、過払い金がないか確認します。
過払い金があれば、過払い金返還請求を弁護士が代行します。
(4) 和解案の作成と提案
引き直し計算によって確定された借金額を基にして、返済期間や月々の返済額などを定めた和解案を作成し、債権者に提案します。
(5) 和解交渉
和解案に従って債権者と弁護士が和解交渉を行います。
(6) 合意書の作成
和解案に合意がなされたら、それを証明するための合意書を作成してもらいます。
ここまではほとんど弁護士がしてくれます。
(7) 支払開始
合意書の内容に基づいて、債務者の毎月の返済が始まります。
完済するまで忘れずに返済してください。
(8) 完済
すべての借金を合意書の内容通り返済したら、任意整理はすべて終了です。
3.任意整理の相談に必要なもの
任意整理を弁護士に依頼するときには、以下のものがあるとスムーズに話が進みます。
- 債権者がわかる書類
- 借金の履歴がわかる書類
- 源泉徴収票など収入がわかる書類
- 通帳などお金の流れが分かる書類
- 印鑑(弁護士への依頼時に必要)
しかし、どれかがなくても心配は無用です。最低限、債権者がわかっていれば、弁護士が債権者に問い合わせて取引履歴を取り寄せてくれますし、上記以外の書類で代用することも可能なケースがあります。
「書類がないから相談できない」と諦めるのではなく、「とにかく相談することが大事」と考えましょう。
4.任意整理のメリット、デメリット
最後に、任意整理のメリット・デメリットを具体的に解説します。
(1) 任意整理のメリット
将来利息を支払わなくて済む
任意整理をすると、将来発生する利息をカットできることが多く、総支払額を減らすことができます。
業者によっては,和解成立までに発生した経過利息のカットに応じてくれるケースもあります。
毎月の返済額が減る可能性がある
それまでの毎月の支払金額が多かった場合には、任意整理により毎月の支払金額を減らすことができるケースがあり、その場合には毎月の経済的な負担が軽減されます。
毎月10万円以上返済していた借金が、任意整理により毎月数万円程度になったケースもあります。
裁判所を通さずに済む
自己破産や個人再生は裁判所を利用するので、弁護士費用以外に裁判所に支払うお金が発生します。
しかし、任意整理は裁判所を通さないので、このお金が発生しません。
また、裁判所を通すより解決までの期間が短くなることもあります。
家族に借金がバレる心配が少ない
裁判所を通さないことに付随したメリットですが、任意整理の場合は裁判所からの郵便物が来ないため、家族が郵便物を開けてしまって借金がバレるという可能性が少なくなります。
弁護士にお願いしておけば、任意整理の進捗を自分だけに知らせてくれるので安心です。
債務整理する債権者を選べる
個人再生や自己破産の場合、すべての借金を平等に清算しなければなりません。しかし、任意整理では、整理する借金を選択することができます。
例えば「持ち家は手放したくないので、住宅ローンは任意整理せず返済を継続する」「保証人に迷惑をかけたくないので、保証人がついている借金は任意整理しない」という選択が可能なのです。
官報に掲載されない
任意整理をしても、その事実が官報で公開されることはありません。
官報を見る人は少なく、官報から債務整理をしたことがバレる可能性は低いのですが、載らないに越したことはありません。ある程度の安心感は得られます。
(2) 任意整理のデメリット
クレジットカードなどが作れなくなる
任意整理をすると、クレジットカード会社や金融機関などにその情報が共有されます。
こうなると、いわゆる「ブラックリストに登録された」という状態になり、クレジットカードの審査に落ちてしまいます。
デビットカードや家族カードを使えばある程度の問題は解決できますが、任意整理による返済を終了してから5年程度はクレジットカードを作ることができなくなるということは覚悟しておきましょう。
ローンの審査に落ちる
上記と同じ理由で、住宅ローンや自動車ローンの審査にも落ちてしまいます。
また、携帯電話端末を分割払いで購入することもできなくなってしまいます。
一括払いで購入するか、配偶者の名義を使ったりすることである程度対応できますが、不便さは否めないでしょう。
こちらも任意整理による返済を終了してから5年程度経過しない限り、ローンの審査に落ちる状態が続いてしまいます。
減額幅が少ない
借金をゼロにできる自己破産や、借金額を5分の1程度にできる個人再生と比べて、任意整理で減額できるのは将来の利息や遅延損害金などに限られることがほとんどです。
このため、借金の額があまりに過大な場合は、任意整理をしても効果が薄いことがあります。
その場合は弁護士と相談して、自己破産や個人再生を検討してみましょう。
5.任意整理手続きにより借金問題を解決可能!
任意整理は、借金の支払総額を減らし、毎月の支払額を減額できる、非常にメリットの多い債務整理方法だということがご理解できたでしょう。
弁護士にほとんどの作業を任せることができる手続きですので、なんとなく複雑で難しそうだから、と躊躇する必要はありません。
どうするべきか悩んでいる間でも、利息や遅延損害金は膨らんでしまいます。借金でお困りの方は、一刻も早く弁護士に相談することを強くおすすめします。
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