交通事故で後から痛み!物損事故から人身事故への切り替え方法
「交通事故に巻き込まれたものの、幸い軽い事故で済み、痛みもなかったので物損事故で処理した」という方はよくいらっしゃいます。
しかし、このような軽い事故には注意すべきポイントがたくさんあります。というのも、物損事故として処理した後に痛みが発生することがあるからです。
数週間経った後、「やっぱり人身事故に切り替えたい」という人は意外にも多いのです。
今回は、物損事故申請後に痛みが発生した場合に「人身事故に切り替える方法」や、切り替えないことのデメリットなどをわかりやすくご説明します。
このコラムの目次
1.交通事故で後から痛みが出る可能性
交通事故直後は何ともなかったはずなのに、後から首などが痛み出す……というのは、実は非常によくあるケースです。
交通事故直後は、大きな衝撃によって、事故被害にあった方の身体はいわばショック状態にあります。このショック状態のときは、人間の生存本能が優先されるため、「痛みを感じない」ということがよくあります。
しかし、事故へのショックも和らぎ、手続きを終えた頃に違和感がやってくるのです。そして、日を追って違和感が増幅していき、痛みへと発展していきます。
そのため、事故から1週間から10日程度は油断せず、身体に異常がないかどうかを自分自身でチェックすることが大切です。
少しでも違和感を感じたら、その時点で病院へ行きましょう。
また、物損事故から人身事故に切り替える場合も、できるだけ早めに手続きを行うことが大切です。できれば、事故から1週間~10日以内に切り替え手続きを行ってください。
事故後は、時間とともに証拠が散逸していきます。できる限り早めに対処することで、事故との因果関係の立証を容易にすることができます。
2.人身事故に切り替えない場合のリスク
警察や行政での手続きは、面倒だと思う方がほとんどでしょう。
しかし、交通事故に遭い、後から痛みが出てきた場合は、きちんと切り替えの手続きを行うべきです。
というのも、痛みがあるのに人身事故に切り替えない場合は、次のような問題が発生する可能性があるからです。
(1) 治療保障が十分に受けられない可能性がある
一番の理由は、「物損のままだと治療費を受け取ることができないケースがある」ためです。
まず、警察への届出上は物損事故の取り扱いのままでも、任意保険会社が民事上は人身事故と扱って治療費の一括対応に応じてくれていれば、基本的に問題はありません。
しかし、任意保険会社が一括対応をしていない場合、物損事故のままでは治療費の保障を受けることができない可能性があります。
また、仮に物損事故のままであっても、かすり傷程度であれば1週間程度で完治することも多いため、一度の通院で済みます。この場合は、被害者の経済的負担も少ないため、大きな問題とはなりません。
しかし、軽傷事故でもっとも多い怪我は、頚椎捻挫などの「むち打ち症」です。むち打ちの症状は、首の違和感・痛み、頭痛などさまざまであり、ひどいケースではこれまで通りの仕事をすることも困難になってしまうケースがあります。
このような症状の場合、治療期間は数ヶ月に及ぶこともあります。この間の治療費をすべて自己負担にするのはデメリットが大きいです。
事故後数週間経ってから病院へ行ったケースなどでは、事故との因果関係が否定され、十分な保障を受けられないこともあります。
(2) 慰謝料の額が低くなる可能性がある
また、「慰謝料の額が低くなってしまうケースがある」のも問題です。
交通事故によってケガをしたことの慰謝料を請求したい場合は、原則として人身事故としての届け出が必要です。
物損事故の場合、慰謝料は保障内容に含まれていません。車などの修理費のみの賠償が原則です。
そのため、任意保険会社が応じない限り、いくら生活に支障が出ても保障を受けられないのです。
警察への届け出とは別に、民事では人身事故として取り扱ってもらうことで、慰謝料の支払いを受けることは可能ですし、実際にそういったケースは少なくありません。
もっとも、場合によっては「物損事故」で届け出ていたことにより、「怪我の程度が軽い」とする反論を受け、任意保険会社からの反論で慰謝料額が低くなってしまうことも考えられるのです。
本当に軽い事故で、加害者も反省していたので「警察沙汰にしたくなかったから物損事故にした」という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、物損事故のままにしていると、治療費が受け取れないだけでなく、今後の生活の保障もなくなってしまうリスクがあるのです。
「痛みが出たら人身事故に切り替える」ことが大切です。
3.物損から人身への切り替え方法
切り替えの大切さが分かったところで、最後に、物損事故から人身事故への切り替え方法をご説明します。
(1) 人身事故への一般的な切り替え方法
物損事故から人身事故への一般的な切り替え方法は以下の通りです。
①病院で診断書をもらう
②警察への届け出を行う
病院で診断書をもらう
まず、痛みが出たらすぐに病院へ行きましょう。
この際、整骨院に行くのではなく、整形外科を受診してください。レントゲンなど必要な検査を行い、医師に診断書を書いてもらいましょう(整骨院では診断書は書いてもらえません。)。
このとき、「交通事故が原因」であることをきちんと伝え、その旨を診断書に書いてもらうことが大切です。
(整形外科では、受付や問診票にて「交通事故が原因かどうか」を聞かれることも多くなっていますが、聞かれない場合は自分で伝えましょう。)
警察への届け出を行う
診断書がもらえたら、警察に届け出を行います。いきなり言っても対応してもらえないことがあるため、あらかじめ電話で予約をしておくのがベターです。
切り替えでは、被害者がと加害者の双方が出向き、実況見分調書などを作成してもらう必要があります。同日に行けない場合もあると思いますので、あらかじめ警察や加害者に連絡しておきましょう。
警察署へ行く当日は、医師の診断書を持って行き、所定の手続きを執り行うだけです。
切り替え期限はありませんが、先にご説明したようにできるだけ早め(できれば事故から10日以内)に行うことをおすすめします。事故からあまりに日にちが経過してしまうと,警察の方で切り替えに応じてくれない可能性があります。
(2) 切り替えができない場合
人身事故証明書入手不能理由書で対応!
事故から時間が経過している場合は、警察が人身事故への切り替えを行ってくれないケースがあります。この場合は、別の方法を考えましょう。
具体的には、加害者が加入する任意保険会社に対し、事情を説明することです。切り替えができなかった旨を話すと、「人身事故証明書入手不能理由書」を送ってもらえます。
ここには、事故の概要の他、人身事故証明を受け取れなかった正当な理由を書くことになります。
「物損事故処理後に痛みが発生したが、警察が人身事故への切り替えを行ってくれなかった」など、できるだけ具体的に書くようにしましょう。事故からどれくらい時間が経過して痛みが発生したのか、なども詳しく書くと良いです。
これを保険会社に提出することで、保険会社が人身事故として取り扱ってくれる可能性があります。
もっとも、ケースによっては、人身事故証明書入手不能理由書を提出しても、保険会社が診断書の内容や時間の経過を指摘して、人身事故として扱ってくれない場合もあります。
このような時は、弁護士に相談するなどして対応を行いましょう。
4.人身事故への切り替えに不安がある場合は弁護士に相談を
交通事故の人身事故切り替えに不安がある方は、専門家に話すことが解決の第一歩です。
任意保険会社との交渉がなかなか進まない、という場合も、交通事故案件を数多く取り扱っている泉総合法律事務所にぜひ一度ご相談ください。
当所の弁護士が、これまでの経験やノウハウから迅速に問題解決へと導きます。さいたま市、京浜東北線・高崎線・宇都宮線・湘南新宿ライン沿線にお住まい、お勤めの方は、泉総合法律事務所浦和支店にどうぞお気軽にご相談ください。
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