自己破産ができない?免責不許可事由とは
借金が重なり、返済できない状況になってしまった場合に考える手段の一つが「自己破産」です。
しかし、「本当に借金の支払いを免除してもらえるのか」と不安になる方も多いと思います。
実際のところ、様々な事情により、自己破産が成功するケースと認められないケースがあるのは確かです。
今回は、「自己破産は申請すれば必ず成功するものなのか」いう疑問から、自己破産が失敗する原因である「免責不許可事由」という制度についてご説明いたします。
自己破産をお考えの方は、ぜひご一読ください。
このコラムの目次
1.自己破産の条件
「自己破産が認められれば借金はゼロになる」と聞いた方は多いかもしれません。
確かに、自己破産をすれば税金などを除いた借金のほとんどが免除されるため、返済に苦慮する必要がなくなります。多重債務に悩んでいる方にとって、自己破産は救済の一手となりえるでしょう。
しかし、自己破産は単に借金がなくなるだけの「簡単な手続き」ではありません。
どのようなケースでも自己破産が認められるわけではないですし、自己破産をするためには、さまざまな手続きを乗り越え、裁判所から許可を得る必要があります。
自己破産を成功させるためには、大まかに言って2つの条件をクリアする必要があります。
具体的には、①支払不能状態を証明すること、そして②免責不許可事由がないこととなります。
(1) 支払不能状態を証明する
まず、自己破産の破産手続きを開始するには、裁判所の開始決定が必要です。
破産法では、債務者が支払不能にあるときに裁判所は決定で破産手続を開始すると規定しています(破産法15条)。
ですから、破産手続開始決定をもらうためには、「支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、弁済期にある債務について、客観的にみて、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)」であることを自分で証明する必要があります。
つまり、さまざまな書類を提出し、「借金がもう支払えない状態である」ということを裁判所に認めてもらわなければいけないのです。
(2) 免責不許可事由がないこと
また、手続きが開始されれば必ず免責許可がもらえるわけでもありません。その後は、「免責不許可事由がないか」ということをチェックされます。
免責不許可事由に該当する場合には、原則として債務の免除は認められません。
もっとも、次に説明することに注意し、しっかりと準備を行えば、ほとんどの方が免責許可を得る(自己破産を成功させる)ことができます。
2.自己破産ができない「免責不許可事由」の場合とは
先に少しご説明したように、免責不許可事由に該当する事情がある場合には、債務の免除は認めてもらえません。
免責不許可事由とは、破産法252条第1項に規定されている事情のことです。法律には、11項目の内容が記載されていますが、大きく分けると下記の3つに分類できます。
- 債権者を騙すような行為
- 破産手続きに対する不正行為
- 何度も破産手続きなどを繰り返す場合
簡単にいうと、「破産を認めるべきでない不当な事情がある場合には、免責許可を出せませんよ」ということです。
また、自己破産申請者の更生が見込めない場合には免責不許可とすることがあります。
免責不許可事由となり得る(実際の事例でよく問題となっている)具体的な行為は以下の通りです。
《免責不許可事由の具体例》
- 多額の浪費やギャンブルによって得た借金
- 支払いを免れるために、財産を隠したり他人に贈与したりする行為
- 経済的信用などに関し嘘の情報で申請し、借金をしたりクレジットカードを作成・購入したりする行為
- ローンやクレジットカードで購入したものを安価に現金に換えるなどの行為
- 業務や財産に関する書類を書き換えたり、偽造したりする行為
- 虚偽の債権者名簿を提出した場合
- 破産手続きで調査を拒んだり、嘘の説明をしたりした場合
- 過去の自己破産や個人再生(給与所得者等再生)の手続きから7年経過していない場合
自己破産申請者の場合、少しでも財産を残すために、財産を家族に贈与したり、財産を少なく見せたりするケースがありますが、これがバレると免責は不許可となります。
また、収入状況や支出状況など、さまざまな調査に嘘をついてしまうと、反省の色が見られないとして免責が認められない可能性が出てきます。
しかし、ここで「自分には該当する事情があるから、自己破産は認められない」と落胆する必要はありません。
実は、免責不許可事由に該当する事情があっても、裁判官の裁量で免責の許可を受けられるケースがあります。
以下、具体的に見ていきましょう。
3.免責不許可事由に該当する場合の「裁量免責」
(1) 裁量免責とは
自己破産に至るまでに、ギャンブルやショッピングなどの無駄遣いで借金を重ねてしまった、という方は多いと思います。
この場合、浪費は免責不許可事由にあたるため、原則として債務の免除は認められません。
もっとも、全て原則通りに運用すると、多くの方が借金に苦しめられたままで、生活を再建することができなくなってしまいます。
そこで、自己破産手続きでは「裁量免責」というものを認めています。
裁量免責とは、免責不許可事由があっても「破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して」裁判所が相当であると認めた場合にできる免責許可のこと(破産法252条2項)です。
つまり、ギャンブルなどで借金が返済できなくなったケースや、他の不正手段を用いて借金をしてしまったケースなどでも、裁判所が認めてくれれば借金が免除される可能性があるということです。
実務上、免責不許可事由に該当し免責許可を得られない人は、申請者の1割より少ないといわれています。
(2) 裁量免責で考慮される事情
裁量免責に関しては、あらゆる事情が考慮され、その事情が総合的に相当でないと判断される場合は免責許可が認められません。
具体的には、以下のような事情が考慮されます。
- 借金をした経緯
- 免責不許可該当事由の悪質さ
- 現在の収入状況
- 破産申請者の生活状況
- 破産申請者の協力の程度
これらの事情が総合的に考慮され、裁量免責を許可するかどうかがか判断されます。
免責不許可事由にあたる内容に関し、悪質性が高いと判断されれば不許可の方向に傾きます。
逆に、破産申請者が十分に手続きに協力し、更生にも前向きである場合や、十分に反省しているといった事情があれば、免責を許可する方向に傾きます。
悪質な詐欺を行ったり、財産隠しを繰り返したり、手続き中もギャンブルを一向に止めないなど、よほどのことがない限りは許可されることが多いと考えて大丈夫でしょう。
4.免責不許可事由がある場合の自己破産は弁護士へ
免責不許可事由に該当する事情がある場合、ご自身で判断して自己破産を諦めてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、ご説明した通り、免責不許可事由に該当するケースでも、多くの方は裁量免責を得て自己破産を成功させています。実際に、泉総合法律事務所にご依頼いただいた免責不許可事由がある案件でも、免責を認めてもらった事例が数多くあります。
自己破産に不安がある方で、さいたま市、京浜東北線・高崎線・宇都宮線・湘南新宿ライン沿線にお住まい、お勤めの方は、是非、泉総合法律事務所浦和支店にご相談ください。
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